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栄光無き変態たち 2
【1はこちら】
創作ゲームの番外編。一応エンディング後のギャグ短編なんですが
そもそもゲーム自体が完成して無いのでどうなの的な。
ゲームはやってなくても大丈夫なように書いてますー。
ではではよろしければどうぞv


---



 さて……顛末は、今まで語った通りだ。
 変態が軍隊に与えた多大なる悲劇、そしてそれを解決すべく俺たちが奮闘することになった経緯だな。

 で、話は戻って、冒頭の窮地だよ。
 戸口で少女が絶叫し、俺たちがパンツ持って硬直してる。
 この状況を画期的なアイディアで以って打開して、俺たちが別にパンツ愛好会の一員とかじゃないことを、この娘さんに納得させにゃならんわけだな。

 ……どうしろと。


「とりあえずパンツは隠したらどーか」

 と、ザビがいう。

「OK。お前いいこと言うじゃないか」

 悲鳴が続いている中、俺たちはそそくさと猥褻物を隠蔽した。
 ポッケの中がイカ臭くなるが仕方ない。
 未来より今が大事だ。OK、バッチグー。

「あー、お嬢さん。パンツは気のせいです」
「…………え、だって、今さっき」
「気のせい。きのせー」
「…………」

 お下げの少女が納得行かないような顔をする。
 しかし、すぐに振り払うように、細い首を振った。

「……わかりました。気のせいです。
私も変なもの見たなんて思いたくないですわ」

「……変なもの」

 軍曹がボソリと呟く。パンツの持ち主は彼である。いたたまれない。

「ソレヨリサー。どーすんのコレから。もう直ぐ十時なんだがね」

 ザビが空気を読んだ。コイツは何気に苦労してるから色色読む。
 読みすぎてマルチ商法に引っかかったりする。……一長一短だ。
 俺も奴の助け舟に乗り、腕時計を見た。話題を変えるにはこれしかない。
 螺子にハッパ掛けるべく手首を振ってから、顔を上げる。

「十時ってことは、変態が現れる頃だな」
「もう現れてるじゃありませんか」

 少女がこっちを指す。
 いや……ええと、その。

「物凄い変態が出るんスよ。最近この街も物騒でねェ」
「そう、中尉殿の仰るとおりです。常軌を逸した変態が出ておりまして」
「まあ……パンツ交換の儀よりも常軌を逸したことがこの世に?」
「……あんなものは序の口なんだ」

 なんというか、他に気の利いた答えが無かった。
 すると彼女は、恐ろしいですねと深刻に眉を顰めてから、俺たち三人の顔を交互に見た。
 ……何を言いたいかは判るが、俺たちは違うんです。
 道を極めるなんて、もうとてもとても。

「……ところで、お嬢さんは一体。
というか、なぜ此処を……?」

 軍曹が尤もな問いを発する。
 彼女も、そこで一旦正気に戻ったようだった。

「……あらら、ごめんなさい。あたしったら。
ええとですね、私、キケロと申します。キケロ・シュヴァンクマイエロヴァ。
魔女の森の四領主の家のものです、以後お見知り置きを」
「……領主の娘が、ンなとこへろへろ出てきてていいんスか」

 淑女の辞儀をする彼女に、ザビがもそりと呟く。
 俺はつい、重い溜息を一つ吐いた……

「俺が護衛なんだ……」
「どんだけ頼りない護衛よ」
「失礼だなお前。俺もう10年ぐらいこの仕事やってんだぞ」
「……まあいいけどよ。この街平和だし。
しかし、領主の娘サンがこんなところで何してんノ?」
「中尉殿、もう少し敬意を払ったほうが宜しいのでは……」
「いえ、構いませんわ。このお二方には、こちらの不手際の際大変お世話になったのですから」

 お嬢様が微苦笑といった具合に微笑んでくる。
 俺たちも、取敢えず肩を竦めて笑った。

 何と説明したらいいのか。
 俺たちは適当に、『魔女の棲む森』事件とか呼んでるが。
 ……ちょっと前、彼女の関係者が、この街で妙な事をやった。
 俺たちはひょんなことからその混乱に巻き込まれ、結局、彼女とともに事の顛末を見届けた。
 事件を解決したわけではない。見届けただけだ。
 だが、それでも、誰も見ていないよりはマシだった。

 そして街には平和が戻り、……俺たちはこんなしょーもない事件に足を突っ込めてる。
 いいことといえばいいことなんだろう。
 だが、だ。
 見聞を広めるとかいう名目で留まってる嬢ちゃんが、こんなところにまでやってくる理由は知らん。
 仕方ないのでその件を問うと、少女はあら忘れてましたとか、ピントのずれた事をいった。

 この娘さんの兄貴と俺は、旧知の仲なんだが。
 なんつうか……こんなん量産されると、こっちの脳みそもユルくなってくる。
 まあ平和ってことなんだろう。

「で、フロイライン・シュヴァンクマイエロヴァ。何かございましたか?」 

 気のない調子でそう尋ねると、彼女は大きな目を見開いて叫んだ。

「それがですね、大変なんです! もーあたし吃驚しちゃって。
今日ホテルで窓の外を見たら、人が歩いていったんですよ。三階だったのに!」

「高所愛好会のヒトの会合でもあったんじゃー……」
「ザビ君自重。そんなの聞いたことない」
「知らねーの?
内陸部の狙撃手、ジェフリー氏が主催する、高所を愛好する狙撃手及び市井の愛好家が集う場所で」
「うるせえ! だあッてろ変態!
え、ええとキケロお嬢さん。その三階付近を歩いていったアホは、こんな顔してませんでしたか」

 と、ザビを指す。
 少女は少し考えると、

「いえ…。なんていうか、申し上げにくいんですけど……水着だったんです」

 など、衝撃の発言をした。
 えーと。

 ……水着?

「……水着、白だったりしたノー?」

 後ろからザビが呟く。問うというより呟いてる。
 見ると、表情はげっそりしていた。
 まあ……うきうきする話題ではないわな。

「わ、そうそう! 真っ白な水着を着た男性だったんです!
なんていうか、ハイレグじゃなかったんですけど……スク水?」

「…………帰りてえ」

 つい弱音が漏れる。漏れさせてくれ。マジ泣きてえ。
 しかし流石、精神力と人間性の欠如では定評のある狙撃手ザビくんは、不条理な現実を物ともせず、彼女へのインタビューを続行した。
 表情は無い。あれだ、……考えることやめたんだろう。偉いぞ同僚。

「その水着男、屋根伝いに行ったんスか? どっち向いてか判る?」

 少女は矢張り少し考えると、ぽんと手を打った。

「それがですね、大変なの! 彼、浮いてたんですの。多分、此方の……お城のほうにきたんだと思うわ!」

「ホレ、エッちゃん。やっぱ特殊部隊だろ」
「選ばれし変態……」
 
 前に耳にした言葉を反芻する。反芻した途端後悔する。もういやだ。
 だが俺も現実は見なければならない。
 気付の意味でも、時計を見た。

「九時五十分――」
「張るぞ。
あっちの廃墟だ。ここがよく見える」

 無表情の同僚が指さしたのは、城壁の向こうに見えるビルだ。
 コンクリートとやらを使おうとして、設計が上手くいかず、結局廃墟になったって話だ。
 洒落た名前を付けるにも困るほど無味乾燥な外観のそれらは、仕方ないので戦中建築物と呼ばれている。

「昨日のうちに準備はしといた。
後はオレらが行くだけサ」
「仕方ねえ」

 乗りかかった船だ。
 俺は友人と共に、ビルへと歩き出した。



---





実はこの分、プロットでは一行です。
どないすんべ…。
とりあえずプロットはあと2行残ってるので(w)
ぽちぽち暇を見て描こうと思います。
あと郵便局が遠いです。…orz
| 03:29 | 小品 | comments(0) | trackbacks(0) |
こんな夢を見た
いや、なんかすごい夢を見ました。
私は人生において取り返しのつかない瞬間、という夢を良く見るんですが
今日は人殺しをした夢を見ました…。
とりあえず始まりは、なぜか本屋の三階で本選んでるんです。
しかもバイトしてる本屋らしい。
そこで、なんか凄くトチ狂ったような本を買おうとして、
財布に千円もない事を思い出し(夢の中でも貧乏でした)
で、もう九時半ぐらいだったんで、バイトの時間終わってるしサボっちゃったんで、
なにかがばれないようにチーフに謝りに行くんです。
適当にうさんくさいウソとかつくんですが、
私、その後に集団で人を殺しに行く計画を立ててたんですよね。
すごく気が狂ったような、読んだら発狂するような精神的によくない本とか読んで。
で、さびれた古寺みたいな所にみんなで行って、
巫女装束?みたいなの着た、極悪人らしき三人組(三人という記憶があるが、
実質殺したのは二人しか見てない)を十人ぐらいの集団で殺したんですが、
血が一面にドパドパ出てて。
そしたら変なお坊さんとか尼さんみたいな集団がわさっと階段上ってきて、
「貴方方は人を殺したので…」と、なんか償いをしろみたいなこといわれて。
うちらのリーダー格みたいなひとがそっちついてっちゃったんですけど、
私もうね、ああ人殺しちゃった、私殺人犯だ、どうしようもない、
親に知られると嫌だなあ、両親すごく悲しむだろうなあ、
嫌だなあ嫌だなあって切羽詰りつつ、やっぱりみんなと一緒に行くんです。
で、私間の悪いことにリーダー格の二三人のすぐうしろで歩いてたんですけど、
変な路地みたいなところに出たとき、幅一メートル程度のどぶ川に面した曲がりくねったせまい路地を
沢山の人間と歩くんですけど、そこの両脇? の部分がyoutubeになってるんです。
道がスクリーンになってるみたいで、民家やらどぶ川の間に映像が映るみたい。
で、その映像ってのが前衛芸術一歩手前のクルクル映像で、
シンジ君が血だまりの中で「僕は生きてちゃいけないんだ」とか言ってるわけですよ
あーここやばいな、こんなキモチワルイ映像見てたら気が狂って、
また人殺ししちゃうなって薄々感じ始めてたら、
なんか昭和ロッキン(椎名林檎?)みたいな音楽が聞こえ始めて、
一面血しぶきの中を月姫のアルクェイドが軽やかに飛び跳ねるって映像のなかに入り込んじゃって、
しかも道が無くなって、どぶ川を歩かなきゃならなくなるんですよ。
リーダーとかはそっちがんがん行っちゃってて。
あ、これはやばいな、この映像一度見たことあるけど(←既視感です)、
この映像見てから私狂い始めたんだな、こっから先行きたくないな、
って思ってると、わき道に逸れる入り口みたいなところから、
fateのイリヤが(しかしなんで型月キャラなんだろう?)でてきて、
「こっちに来てください、そっちはよくないよー」って手招きしてて、
慌ててわき道のほうに逸れるんです。
そこで私も妙に正気に帰ってきて、
なんか、人殺しの記憶っておぼろげなんですよね。
私そもそも、人なんか殺してたか?って思い始めて、
一緒に殺したらしき仲間に、「私達、本当に人殺したんですかね?」ってきくと、
「ひょっとしたら、妄想を一定方向に固定されて、操られてるだけのような気がしますね」
って返事が返ってきて(つまり人殺しはしてないってこと)、
そしたら路地から出て、ぱっと明るい大通りが見えて、
そこで眼が覚めるんです。コンビニとかもみえた。

アルクェイドについてったらどうなったんだろう……
私ちゃんと目が覚めたのかしら。





……というのを、おそらく正月近辺に見たんだと思う。
今見るとなんかものすごいです。
面白いような気もするけど、実際見たら悪夢だったんだろうなあ。
| 04:09 | 小品 | comments(0) | trackbacks(0) |
栄光無き変態たち
『魔女の棲む森』のショートストーリーをざかざかっと書いてみました。
続きは未定。いや書くけど。
ジゼの妹のキケロ(魔女絵の子)が大活躍するお話ですが
大活躍は後半なので未だ書けてません。
たまにこんななーも考えないでいいバカ話が書きたくなるるる〜
拍手お返事はこの最後です。すみません…!
(あとまえに裏表紙の英語の間違いを教えてくださった方、かまわなければ訂正にご協力いただけると助かりますつД`) マジ切実です)
------



1.





「壮年男性の使用済みパンツの魅力、お前に判るか」

 ――と、衝撃的な問いを立ててみる。
 すると友人は、――友人であって職場の同僚でもある、グザヴィエ・カルメンという男は、神妙な顔をして首を傾げた。

「ムリ」
「無理……じゃあ、駄目なんだよ。
俺達はさ、ダメなんだ。チャレンジ精神が足りないんだよ。
お前、自分の人生を振り返ってみてどうだ。思い残す事は無いか?
あのとき、もう少し努力してあの一歩を踏み出していたら、自分の人生はもっと報われただろうとか…思うことなかったか?」

「……山ホド」
「そうだろ。それはさ、チャレンジ精神が足りないんだよ。
お前は自分を変えなきゃいけない。わかるよな?」

「そう言われてみると……」
「そんな気もしないか?
いや、気がするだけじゃだめだ。実際に行動してみる勇気が必要だ。
この場合だと、壮年男性の使用済みパンツの魅力を、能動的に探してみる勇気だ」

「……例えば?」
「まずは、被ってみるとか」

 そう言って、パンツを渡す。
 ここは42歳単身赴任男性の暮らす寮で、しかもベランダだから、洗濯前のパンツは山ほどある。
 俺はその中でも、脱ぎ立てホヤホヤのパンツを一枚、友人へと渡した。

「これを……被るんデスカ」
「何日洗ってない? これ」

 背後にいる持主に訊ねると、彼はそっと指を三本立てた。
「3日だそうだ」
「3週間です」
 聞かなかった事にする。
 そして俺はとりあえず、奴にパンツを渡す。
 そして二人でじっと、パンツを挟んで見つめ合う。
 膠着状態だ。
 持主が向うでそっと、俺達を見守っている。

「エックハルト……オレにゃ、ちょっとハードルが高すぎ……」
 そこに――
「やっと見つけました! 中尉さんたち、ちょっと大変な事が!」

 けたたましい音を立てて寮の部屋のドアを開けたのは、お下げの美少女だった。
 彼女の視線は大変運が悪い事に、真直ぐにパンツ(汚)を交換する男二人に注がれている――……
 
「キャーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!!!」
「いやっこれは違うんだ、不幸な事故っていうかッ!!」

 ――ある冬の午前中、男ばかりの官舎において少女の絶叫が響いたのであったが、これには深い訳があって、別に俺だけが悪いわけじゃない。
 そう脳内で必死に言い訳をしつつ、俺――連合陸軍中尉のエックハルト・フスは、ことの顛末を説明すべく記憶を探るのであった……。






2.


 それは朝一番、未だ夜も明けていない時刻の事だった。
 俺の寝台に誰かが座っている。
 起き上がると、見慣れた短い金髪が見えた。

「性犯罪と言うのは許しがたい。そーだろ?」

 と、奴が言う。無論、前述の友人、グザヴィエである。
 しかし……そもそも、何で俺の部屋にいるんだ。
 訊ねると、やむをえない事情があったので、寮母さんに頼んで押し入ったと返事をされた。
 いや別に……かまわんといえばかまわんが、びっくりするじゃないか。鼠色のにーちゃんが部屋にいたらさ。
 すると奴は、それなりにこちらに謝って、泥のような無表情で顔を上げた。
 今日も寝ていないのだろうか、その目の下はやつれている。

「そうだな、……でもお前には関係ないだろ、グザヴィエ?」
「世ン中には予測不可能な事がある」
「性犯罪被害者にでもなったのか?」
「オレじゃねえ……が、見過ごせる話でもねェ。
ちょっと大変なことになっちまったんだよ。オマエの協力が要るんだ」
「何で?」

 状況が飲み込めない。
 すると奴、グザヴィエは寝不足の顔をグイとこっちに近づけて、ボソリと言った。

「エっちゃん、こりゃ本当に大変な事件なんだヨ。
単刀直入に説明するとな、昨日ウチの隊の人間が、公園でワイセツな行為をされたンだ」
「何だって?」

 そりゃ、大事だ。
 しかしなぜか、強烈な違和感がある。

「ちょっと待てザビ、俺は中隊の人間を全て覚えている。
だから言うが……――ウチの隊に女はいないぞ」

「被害者は女じゃねェよ。よくあるこった、それぐらいな」

 ……何だ、男色の変態か。
 滅多にある事ではないが、まあ男ばかりの職場だし、そのテの人間が来ないこともない。
 可哀想に。徴兵に取られたばかりの若造が、変態の餌食になってしまったのだろう。

「そうか、……被害者は、幾つぐらいなんだ。
まだ若いのか?」

 神妙に訊ねると、ザビは沈痛な表情で言った。

「最年少だ」
「まさか、16か?」
「42だ」



「――?」


 状況が飲み込めずにいると、奴は灰色の双眸を細めて、改めて告げた。

「被害者は42歳既婚男性。チャームポイントは胸毛」


 ――。

 窓からは光が漏れていた。
 朝焼けである。
 要塞の朝は美しい。
 時間を間違えた鴉がカーカーと、マヌケな声を上げて、
 人間どもを見下すように飛び去っていったようだった。




3.



「オーケー、話をもう一度まとめよう。
時は三日前の金曜日。公園で、全裸でスクール水着を着た変態(推定30代)に
42歳軍曹が襲われた。突然飛び掛られて抱きつかれ、振り払って家に帰ると、
夜には使用済みブリーフが全て盗まれていた。

そんな事件が今週で5件起こっている。
間違いないな、ザビ」

「そういうこった。敢えて付け加えるなら、
42歳軍曹はオレの補佐の、ピョートル・クリストファー」

「……それは聞かなかったことにする。顔見知りの使用済みブリーフは想像したくない。
ええとだ、それでお前は、犯人を捕まえるように、被害者団に依頼されたと」
「そーだ」
「自分らで捕まえりゃいいのに……」
「スク水男を素手で触るのがイヤだと」
「それで上官に頼むか……しかもお前も引き受けてんじゃねえぞ、ザビ」
「普段なら引き受けねーけどな。
オレはその辺の連中と違って、素手じゃなくても捕まえられっから」
「……?」

 偉くナチュラルな発言に、思わず考える。
 素手じゃなくても犯人を捕まえる方法って……

「お前……なあ真坂」
「こちとらプロでね」

 マジかよ!
 こいつは凄腕の狙撃手だった。
 国の英雄として名高いある狙撃手の、相棒が務まるぐらいだったそうだ。
 俺も何度か見たことがある。奴が豆粒ぐらいの鳥を、平然と撃ち落す様を。
 しかし……不敵材不敵所もここまでくれば華々しいというか……

「……なあザビ、考え直せよ。師匠の勲章が号泣するぞ?」
「いいンだよ、先生もこないだ実家で、ガキどもに射撃を教えるはずが、目玉焼きの作り方教えて帰ってきたっていうし」
「お前の師匠も何やって……いや、よそう。
あの人はそういう人だよな、確かに」
「なンだよ。いいヒトなんだぜ? うっかりマルチ商法とか引っ掛かるタイプだけど」
「その辺は弟子に受け継がれてるわけだな」
「オレは一回しか引っ掛かったコトねェよ」
「あんのかよ! バカ!
あー、話を戻そう。……つまり犯人がパンツ盗んでる間に、狙撃すんのね?」
「そういうこった。エっちゃん賢い!」

 などと言いながら、グザヴィエが指を指すのは下士官官舎の三階である。
 ある程度年齢が行く下士官は既婚者が多く、妻子と連れ立って住むのが通例だが、今の職員は単身赴任の独居が多い。
 オーゼンセのようなド辺境には、家族は付いて来てくれないのだろう。
 まあ25になってもまるで嫁の影も無い俺達にとっちゃ、妻子がいるというだけで羨ましい事なのだが。

 下士官官舎は塀の内だ。
 その代わり俺達下級士官の家よりは上等に作られているし、実際給料もいい。
 下級士官の給料は残念なものだからな。公務員の若いうちは、暗くて臭くて貧乏なのだ。
 そんなことに思いを馳せながら、立て直されたばかりの官舎を見上げている。すると、グザヴィエがおもむろに玄関へ入っていった。

「エッちゃん何やってんノー? 早くしないと変態来ちゃうヨ」
「っていうか、考えてみたんだけどさ。何で俺まで行くことになってんの?」
「アーン? そりゃオマエ、いくら頼まれたからって滅多に無い休日にさ、変態を狙撃するために一人孤独に張り込み続けるって嫌じゃん」
「……それはどういう」
「ひまつぶし」
「てめえ!」

 一瞬マジ殴りに行こうかと駆け出すと、その前にザビが大声を出した。

「オッサン! いやー悪ィ、こんな朝早く!」

 見ると、確かに誰かがいた。
 ピョートル・クリストファー軍曹。
 中隊の第一小隊、隊長補佐。つまり、ザビの女房役だ。
 落ち着いた物腰の、葉巻好きの男性はしかし、沈痛な面持ちで立っていた。

「カルメンの旦那。……すいませんね、こんなこと」
「いンや。世話になってっからな」
「しかし今日は、…フス中尉殿までこちらに?」
「ン、ちょい思うところあってな。アイツも役に立つから」
「いや、お二人もお手を煩わせるとは……」
「気にすんな、どーせヒマだ」
「……うるへー」
 ザビの言葉にはいちおう抗議しておく。ヒマだけど。
「ンで? 今日は未だ来てないよな」
「ええ。毎日、10時頃には来るのですが」
「……まいにち?」

 思わず口を挟む。
 すると軍曹は、重々しく頷いてきた。

「毎日です」
「毎日……パンツ盗むの」
「はい。」
「それも使用済みの」
「……」

「あ、使用済みって、洗って干してる奴じゃねーぞ。
洗う前だかんネ」
「そんな注釈いらねえ!!」

 思わず絶叫する。
 それおかしいだろ、どう考えても!
 すると軍曹は、懐中を探っているようだった。

「旦那。指定の廃ビルの使用許可下りてます」
「OK。流石早いネ。オレのほうも小銃の使用許可貰ってきた」
「……たかが変態にエライ力の入れようだなー」
「たかが変態じゃネーんだヨ」

 ふっと、ザビが肩を竦めた。
 俺は眉を顰める。

「たかが変態だろ?」
「チガウ。
……多分、同業でね。」
「どうぎょう?」

 軍か?
 すると奴は、ガキの頃みたいに目つきを鋭くした。

「特殊工作員の存在は知ッてっか?」
「とくしゅこうさくいん? また大仰だな」
「先生が昔言ってたんだよ。
肉体改造して馬より早く走る奴とか、
腕に水かきがあって空を飛べる奴とか」
「……ネタだろ?」
「ネタじゃねェ。実在してんだ。
で、今回の犯人は、下士官のおっちゃんらがタバになって追いかけても、
全然捕まらないらしいのな。
証言によっちゃ、空飛んだって話もある」
「変態にそこまでの能力があるとは……」
「だからタダの変態じゃネーんだよ。
選ばれし変態なんだよ」
「また口に出して読みたくない日本語を」
「……だがさ、こちとらヒラとはいえ軍隊だ、プライドあんだよ。
シマ荒らされた挙句に使用済みパンツ盗まれてちゃ、かなわねえ。
大体盗まれたのは官給品だ、エッちゃんだってほっときゃ会計係から愚痴聞かされるハメになるんだぜ?」
「……そりゃ勘弁して欲しい。
タダでさえ予算足りなくてヒーコラいってんのに」
「だからオレが寝ないように協力しろっつってんの。
オレちょい昨日から、預かってるガキが煩くて寝てねえからサ」

 …だからやつれてたのか。
 
「ガキって、あのマッチ売りの嬢ちゃんだろ。
他んとこに預けた方がいいんじゃないか? 仮にも男と女だし」
「それよ。だがもうちょっとで大尉の家が片付くから、そっち預けるヨテイ。
ソレまではオレがガマンです。
ところで、オマエんとこの嬢ちゃんは無事なんだろうね?」

 と、話がこちらにふられる。
 こっちの嬢さんといえば……後輩の妹か。

「ジゼの妹なら俺の家には泊まってないぞ。
普通にホテル取ってる」
「実費で?」
「あいつら実家が金持ちなんだよ」
「チッ。金持ちは羨ましいこって」

「――旦那方、現場検証はしなさらんかね」

 その軍曹の言に、俺らは共に振り向いた。

「そうだな、先にしとッか」

 グザヴィエが振り返る。

 オーゼンセの朝は冷たい。
 凛とした静けさの中、俺達は霧を掻き分けて建物へと入った。





------

(続)



そして拍手お返事
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