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【オカルト八幡】赤い貞子

【オカルト八幡】赤い貞子

これは、私の大学時代の話です。

その冬。私は、卒論の提出を控えていて、研究室(自習室のようなもの)にこもって、遅くまで書いていました。そのため、10時を過ぎたら、同じ研究室の、学校の近くに下宿している子の家に泊めてもらっていました。なぜかというと、私の家は遠くにあったので、そのまま帰ると防犯上、危険があったからです。
これは、その時きいた話というか、体験です。


「八幡ちゃん、『赤い貞子』って知ってる?」
と彼女は言いました。
「なにそれ」
「怖い話だよ」
彼女はへらっと笑いながら、携帯ゲームでやっていた乙女ゲームの電源を落としました。
「夕方にね、出るんだって。
学校の近くの細い路地に、真っ黒な髪を顔にながーく垂らした、赤いワンピースの女がさ、自転車を押しながら歩いてくるんだって」
「え、怪人物じゃん。学校に通達とかしなくていいの?」
「そのうち通達いくかもね。
まあ、見たのは今のところ、うちらの学年の、男子たちだけみたいだけど」

彼女はテレビを消します。
流れていたお笑いの深夜番組が消えた部屋は、なんだかいやに静かになります。

「なんでもね……
夕方、黄昏時にさ、男子が一人で歩いてるとね。
キコキコ、キコキコって、さび付いた自転車をおす音がするの。
振り向かなければ、ずっとついてくるの。まあ、それだけですむんだけど。
でも、振り向いてしまったら……

その姿を見た子は、必ず、高熱で生死の境を彷徨うんだって」

「……へえ」

「私さあ、このあいだ、冗談でその噂、研究室のPCで書き起こしてみたんだけど」
「う、うん」
「おかしいんよ。
何度やっても、「キコキコ」が、「寄子奇子」になるの。
よりこ?って、最初は思ったんだけど……


奇形児も、この奇の字なんよね。
……この学校、戦時中は戦争のための施設で、
沢山の人が亡くなったっていうじゃない?
忠霊塔もあるし。
成仏できない無念の霊とか、いろいろ、集まってくるって噂だよ。
その中に……いたのかもね。
赤い貞子みたいな霊が……」
「や、やめてよ……
もう1時やん……
寝られないよー」

めっちゃビビった私は、思わず部屋のこたつにもぐりこんだんですが
彼女は、「ちょっとまって。私ヤフオクの取引終わらせてから寝る」
っていうんですね。
まあ、怖い話聞いた後だし、電気ついてる方がありがたいわ……と、
私もその日は灯りがついてるままでこたつの中で寝ちゃったんですけど。

さて、当時私は地元、高知の大学に通っていました。
高知には例の、色んな方面にやたら博識な先輩がいたので、会ったときにその話をしてみたんですよ。
この先輩は、心霊とアニメ漫画と仮面ライダーに並々ならぬ知識量を誇る立派なオタク女性なんですが、大変世話好きなけっこうなお人柄で常識人だというのに、突然「(三国志の)呂布は魔性の美少年」というドマイナーな性癖を暴露して我々を驚愕のズンドコに落とし込むというなんか面白不思議な人です。
心霊オカルト関係にも博識で、どういうものが危ないのか、よく教えてくれたりしていたんですけどね。

さて先輩、赤い貞子の話をきいて、「ううん…」と唸りました。
その唸りようが、なんというか、尋常じゃない。

眉間にしわを寄せて、実にこう、「それは…よくないものの話ですね…」と霊能者がいうときの、あの雰囲気です。冬場の駐輪場でそんな雰囲気になると、人通りはあるとはいえなんか不気味です。

私は生来の怖がりもあって、、もうめっちゃびびってしまって、ヤフオクで買ったばかりの、自分のお気に入りのキレイ色のコートの裾を握りしめてしまったりして、ガタブルしてました。
「やっぱりよくないんですか」
私が聞くと、先輩は頷きました。
「よくない。特に、学校が動くっていうところが」
「え…」
風が強い日でした。冬の寒い風がばんばん顔に当たるので、私は慌てて髪をまとめ直します。
シュシュをつけていると、先輩は神妙な顔つきで、ひとつ頷きました。

「……いいにくいんだけど。
前から、君に言わなきゃいけないと思ってたんだよね」
「え、なにを」
先輩は明らかに私を見ています。
「な、なんですか」
「髪、切った方がいいと思う」

「……は?
え、私?」
思わず私は自分を指さすと、先輩は頷きました。

何だろう。長い髪は霊的によくないとか、そんな話なんだろうか。
そんな話あったっけ?

すると先輩は、眉間に指をあてながら、言いにくそうに、実に言いにくそうに、ぽつりぽつりと話し始めました。
「あのさ……」
「な、なんですか。もう私に赤い貞子がとりついてるとかいうんですか? やめてください怖すぎるんですけど」
「いや、その赤い貞子っていう噂なんだけど」
「は、はあ」
「その妖怪、いくつか特徴があったよね?
えっと、貞子のような、顔まで覆った真っ黒い長い髪で。
赤いワンピースで。
それが、寄子寄子(きこきこ)、と、さび付いた自転車をおしてくる……。
そしてその姿を見た者は、高熱で生死の境をさまようっていう……」

「そ、そうです」
「正体、わかっちゃったんだよね」
「!!??」


「ど、どういうことです!?」
と聞くと、彼女は意を決したように、ぽんと私の肩を叩きました。

「君じゃないかな……正体」

 

 

 

「ファ?」

……変な声が出てました。
なにがなんだというんです??
先輩はメッチャ言いづらそうにこっち見てるし。

「え、ちょっと、どういうことですか。
私が妖怪だってんですか。いや確かに不気味なオタクですけど
いやいやいやそこまで最終形態にはなってないはず
「いや、君、一発芸で貞子得意やん」
「得意ですけど!?」
「あとチャリンコ整備しないやん」
「!? い、いや、整備のタイミングがちょっとわからなくて、でも、赤いワンピなんて着てないですよ」
「お前今メッチャ赤いコート着てるやん!!」
「ファーーー!?」

……先輩に指さされたのは、私がヤフオクで落とした、濃いキャメル色のロングコートでした。

「あ……赤??? ですかね???」
「目撃現場って夕暮れやろ? 全体的にチョー赤いやん?
そこでキャメル色なんか着たらそら真っ赤に見えるやん?
しかも君、よくシュシュ外してるから、
髪の毛くくらずに歩いてるとめっちゃ貞子みたいやん???」
「んあー……」

そうなん?? そんな馬鹿な、と思いましたが、
確かに私の一発芸の貞子は各方面に好評で、
「いかにもテレビの中から出てきそう」「井戸の中に八幡がいたら眠れる気がしない」「頼むから暗い廊下に潜んでて、人が来たら四つん這いで出てくるのやめろ」と、家族友人一同をかなりのクオリティで恐怖させていたと自負しております。
が……

「……え、私、男子学生に高熱を出させた覚えはないんですけど」
さすがにそこまでは。
すると先輩、そっと、駐輪場に貼られたポスターを指さしました。
『インフルエンザ注意
予防接種をしましょう』
「んあーーーーー」
「夕方にさ、学校付近でうろうろしてた男子って、ようは卒業制作で研究室とやらにこもるための夜食を、日が暮れて歩きにくくなる前に買いに行ってるんやろ?
だいたい、制作やら卒論やらに追われてるときって生活リズムが不安定になるからなあ。
それで風邪ひいたんやろ絶対。疲れてんねんみんな。つかれてんねん」
「あっ……」

ぽん、と。
再び先輩に、肩を叩かれます。

「学校に通報される前に髪切って自転車整備しような?」

「……は……はい……」


その後。
私が髪を切り自転車を整備したのちに、赤い貞子の話は聞かなくなりました。
が、また例の同じ研究室の彼女に、今度はホンモノの忠霊塔の怖い話を聞かされたのは、また別の話で。
もうなぁ、夜中に怖い話するのやめろよぉ。眠れないだろぉ。やめろよぉーー。

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